河川の流量

流量とは

流量とは、単位時間に河川のある横断面を流過する水の体積です。
例えば、左右岸の堤防の間の横断面(下図、断面積A)を1秒間に通過する水の体積のことで、流速(流れの速さ)と断面積を掛けると流量が計算できます。
測定単位は、立方メートル毎秒(m3/s)です。

観測方法

流量を観測する方法としては、河川のある地点の断面積と流速を測ってこの積を流量として求める方法が一般的に用いられています。実際の作業では、河川横断方向の断面をいくつかの区間に区切って各区間の流速と断面積を測り、この積の和をとることとしています。区間の区切り方は、河川の水面幅によって3~20の測線数とします。
流速の測定方法としては、①可搬式流速計による方法、②浮子(ふし)による方法、③固定式流速計による方法があります。

①可搬式流速計による方法

主に、洪水でない、流れが比較的穏やかな時の流量観測に用います。
可搬式流速計には、回転式流速計(プロペラなどの回転部の回転速度と流速が比例するように設計)、電磁流速計(ファラディの法則によって磁界内を移動する電気伝導体(河川水)より発生する起電力から流速を求める)などがあります。
また近年、超音波ドップラー流向流速計(ADCP、Acoustic Doppler Current Profiler、水中に超音波を発信し、超音波のドップラー効果を応用して河道断面内の3成分(上下流方向、左右岸方向、鉛直方向)の流速分布を測定する機器)を用いて測定する方法も普及しつつあります。具体的には、ADCPを船に搭載し河川を運航しながら、あるいは河岸・橋上からロープを使って操作しながら測定します。

②浮子による方法

主に、洪水時の流量観測に用います。この場合、流速測定と同時に水深を測ることは困難ですので、出水後なるべく早い時期に横断測量を行って断面積を求めます。
この方法は、浮子(ふし)を橋梁などから川に投下し、河川の上下流方向(縦断方向)のある計測区間(流下距離:50~100m程度)を流下する時間をストップウォッチで計測することでその区間の平均流速を求めるものです。

*浮子(ふし)
魚釣りの浮子(うき)と同じように、水面から頭だけ出し、立った姿勢を保ちながら、水の流れとともに流される棒状のもの。計測時の水深に応じて、表面、50cm、1m、2m、4mの吃水長のものがあります。かつては竹竿を使っていましたが、現在は紙製のものを用います。夜間の観測では、流下位置が確認できるよう浮子の頭部に発光体を付けます。

③固定式流速計による方法

固定式の流速計には、次のようなものがあります。いずれも無人で、かつ連続観測が可能という利点がありますが、実用化に向けての調査・実験段階のものもあります。

1)水中設置型流速計

水中に超音波の送受波器を設置して、伝播時間や反射波のドップラー周波数変化から流速を求めるものです。

ⅰ.超音波流速計

「上流から下流へ超音波が伝播するのに要する時間と、反対に下流から上流へ伝播するのに要する時間の差は、超音波伝播線上の平均流速に比例する」という原理を応用した観測装置です。
1対の超音波送受波器を上下流方向に距離をおいてそれぞれ左右岸の水中に設置します。送受波器は、水深に応じて鉛直方向に複数個(左右岸で1対)設置し、各層の平均流速を積分すれば流量が求められます。

ⅱ.水平方向ADCP

ADCPを片岸の水中に設置し、対岸に向けて水平方向に発射した反射波音波のドップラー効果により、横方向の流速分布を求めるものです。

2)非接触型流速計

非接触型流速計は、流水に直接触れることなく河川の表面流速を計測する器械で、次のような器械・方法があります。

ⅰ.電波流速計

橋梁等に河川横断方向に固定して設置された数台の電波受発信器を用いて、マイクロ波のドップラー効果により、表面流速を測ります。
なお、電波流速計には、可搬式のものもあり、これを用いた測定も普及しつつあります。

ⅱ.画像処理による方法

河岸あるいは橋上に設置したビデオカメラを用いて河川表面流の状況を撮影し、その画像で判別可能な浮遊物(ゴミなど)や波紋等の移動を解析することで、表面流速を測ります。可視画像を用いた場合、暗闇(夜間)での観測は困難ですので、赤外線カメラなどの利用が必要です。